第23章 演劇祭
雄英高校には、毎年恒例の一大イベントが近づいていた。
――演劇祭。
体育祭や学園祭とはまた違う。
ヒーロー科、普通科、サポート科、経営科。
学科の垣根を越えて全校生徒が参加する、雄英ならではの伝統行事だ。
演技力だけではない。
舞台装置、照明、音響、衣装制作、宣伝活動。
それぞれの個性と技術を活かし、一つの作品を作り上げる。
だからこそ、生徒たちの熱量も高かった。
そして何より――。
今年の主役が誰になるのか。
それが最大の注目ポイントだった。
「演劇祭とかわくわくするよな!俺も何かやりてぇ!」
1年A組の教室で切島が拳を握る。
「無理だろ」
即座に爆豪が切り捨てた。
「なんでだよ!?」
「顔」
「顔!?」
教室のあちこちから笑いが起こる。
「でも今年の題材、まだ発表されてないよね?」
麗日が首を傾げた。
「確か今日の昼休みに放送だったはず……」
出久は教室の時計を見上げる。
時間的にもうすぐだ。
「どんな話になるんだろうな!」
「恋愛物だったら面白そうだよね!」
「いや、冒険ものじゃない?」
「ミュージカルとか?」
クラス中で予想合戦が始まる。
演劇祭の題材は毎年、教師陣と生徒会によって厳選される。
そして題材発表後、全校生徒に投票用紙が配布される。
自分がその役にふさわしいと思う生徒の名前を書く。
全校投票。
たった一票。
だが、その積み重ねで主役も脇役も決まる。
実力だけではない。
人気も信頼も人望も関係してくる。
ある意味、体育祭以上に緊張するイベントだった。
その時だった。
校内のスピーカーから小さなノイズ音が流れる。
ブツッ――。
途端に、あちこちの教室でざわめきが止まった。
「来た!」
「放送だ!」
「静かにしろ!」
誰かが叫ぶ。
生徒たちの視線が一斉に天井のスピーカーへ向けられる。
期待。
緊張。
興奮。
様々な感情が入り混じる中――。
雄英高校全体が、次の言葉を待っていた。
そして数秒後。
生徒会室から流れる校内放送が、静寂を破るのだった。