第22章 お見舞い
朝の生徒たちで賑わう玄関。
ユカリと出久は靴を履き替えていた。
出久はふと思い出したように顔を上げる。
「あ、そういえばユカリ先輩」
「?」
「昨日の熱はもう大丈夫ですか?」
心配そうな声に、ユカリは笑顔で頷いた。
「うん」
そして両腕を軽く広げる。
「見ての通り完全復活しました!」
にこっ。
どこか子供っぽい笑顔。
出久は思わず安心したように笑う。
「よかった……」
本当に元気そうだ。
その様子にほっとする。
そして。
「それじゃあ」
出久は1年生校舎へ向かおうとした。
だが。
「あ、出久くん」
ユカリに呼び止められる。
出久が振り返る。
「はい?」
ユカリは少しだけ考えてから言った。
「爆豪くんに伝えてくれるかな」
「昨日作ってくれたうどんの味」
「すっごく好きって」
出久は思わずドキッとする。
「えっ!?」
周囲も反応。
「ん?」
「爆豪?」
「うどん?」
聞こえた生徒たちがざわつく。
出久は慌てる。
「あ、は、はい……!」
頭をぶんぶん振りながら頷く。
ユカリは満足そうに微笑んだ。
「ありがとう」
それから軽く手を振る。
「じゃあ、またね」
「は、はい!」
出久も手を振り返す。
そして1年生校舎へ向かって歩き出した。
その途中、出久は考える。
……これ。
かっちゃんにどう伝えればいいんだろう。
『ユカリ先輩が、昨日のうどんの味すっごく好きだって言ってたよ』
普通だ。
普通のはずだ。
でも。
かっちゃん相手だと何かが起こる気しかしない。
出久は小さくため息をついた。
一方。
その頃のユカリは。
少しだけ照れたように笑いながら3年校舎へ向かっていた。
昨日のうどん。
本当に美味しかった。
だからちゃんと伝えたかった。
本人に言うのは。
なんだかまだ少し恥ずかしかったけれど。