第22章 お見舞い
部屋の中は静かだった。
お粥を食べ終えたユカリは、少しだけ顔色が戻っている。
一方。
爆豪は時計を見る。
昼休み終了まで、もうあまり時間がない。
「……戻る」
立ち上がる爆豪。
椅子が小さく鳴る。
すると。
布団から伸びた手が、爆豪の腕を掴んだ。
「………」
ぴたり。
爆豪が止まる。
ベッドの上。
ユカリがこちらを見ていた。
熱で少し潤んだ目。
ぼんやりした表情。
そして。
「爆豪くん」
小さな声。
「……もう行っちゃうの……?」
寂しそうだった。
その声音に。
爆豪、完全に固まる。
熱は人を弱らせる。
たぶん今のユカリは、普段よりずっと素直だ。
そんなこと、わかってる。
わかってるのに。
嬉しい。
めちゃくちゃ。
心臓うるせぇ。
爆豪は視線を逸らしながら舌打ちする。
「……チッ」
でも。
そのまま振り払ったりはしない。
数秒黙った後、ぶっきらぼうに聞く。
「……夜、食いたいもんあるか」
ユカリの目が少し明るくなる。
「ハンバーグ」
「元気かよ」
爆豪は真顔で言う。
「消化悪すぎ、うどんにしろ」
ユカリ、しょんぼり。
「えぇ……」
その反応に、爆豪は少しだけ笑いそうになる。
「治ったら作ってやる」
ぽつり。
ユカリが瞬きをする。
「……ほんと?」
「だから今はうどん」
完全に保護者。
でも、その言葉だけで十分だった。
夜も来てくれる。
そうわかった瞬間。
ユカリは安心したように笑った。
ふわっと柔らかい笑顔。
それを見た爆豪は、一瞬だけ目を細める。
そして。
「……ちゃんと寝とけ」
そう言い残して部屋を出ていった。
扉が閉まったあと。
ユカリは布団に顔を埋める。
熱のせいなのか。
別の理由なのか。
胸が少しだけ、あたたかかった。