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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第21章 転入生




人の行き交う音。

アナウンス。

雨音。

その全部が遠く感じる。

凛は、ユカリを見つめていた。

びしょ濡れで。

息を切らして。

怒って。

泣きそうで。

必死でここまで来てくれた。

凛はちゃんとわかっている。

ユカリが自分を大事に思ってくれていること。

それは本当。

でも。

その気持ちは。

凛がユカリへ抱いているものと、同じじゃない。

そんなこと。

とっくにわかってる。

ユカリの心には。

もう別の誰かたちがいる。

爆豪。

轟。

きっと。

あの一ヶ月で凛自身も気付いていた。

だから。

無理に連れて帰ろうなんて思わなかった。

思えなかった。

でも。

それでも。

今だけは。

ただ。

この時間が愛しかった。

凛はゆっくり腕を伸ばす。

そして。

濡れたユカリを抱きしめた。

ぎゅっと。

大事にするみたいに。

ユカリが小さく息を呑む。

凛は静かに言う。

「……必ずヒーローになる」

その声に。

もう迷いはなかった。

壊れるかもしれない。

怖くないわけじゃない。

それでも。

諦めたくない。

幼稚園のあの日。

ユカリと交わした約束。

“一緒にヒーローになる”。

あの時。

確かに夢見た。

だったら。

もう一度。

前を向く。

凛は少しだけ笑った。

「次会う時は」

「ちゃんとかっこいいヒーローになってるから」

ユカリの目が揺れる。

そして。

泣きそうに笑った。

「うん。楽しみにしてる」

その返事だけで十分だった。

凛はそっとユカリから離れる。

その時。

後ろでずっと黙っていた環がぽつり。

「……凛」

凛が見る。

環は静かに言った。



「無理だけはしないで」



短い言葉。

でも。

そこには昔からの情が詰まっていた。

凛は少し目を細める。

「環兄こそ。ちゃんと幸せになれよ」

「じゃあな」

そして。

今度こそ。

前を向く。

搭乗口へ歩いていく背中。

もう迷いはない。

ユカリはその背中をずっと見つめていた。



雨の日。

たった一ヶ月の再会。

でも。

それはきっと。

凛がもう一度ヒーローになるための、大事な始まりだった。


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