第21章 転入生
***
3年A組。
朝のホームルーム前。
雨音だけが響く教室。
その空気を切り裂くように。
ガラッ!!
勢いよく扉が開いた。
教室中が驚いて振り返る。
そこにいたのは環。
息が上がっている。
珍しい。
こんな必死な環。
ユカリが目を丸くする。
「環?」
環は迷わず言った。
「ユカリ、今すぐ出ないと間に合わない……!」
「え?」
ただ事じゃない。
その空気をユカリもすぐ察する。
「もしかして……飛行機?」
環が頷く。
「そう」
短い返事。
そして。
「……あいつ、一人で帰るつもりだ」
その瞬間。
ユカリの表情が変わった。
「っ……!」
すぐ立ち上がる。
「先生!!」
教室中がざわつく中。
「ちょっと行ってきます!!」
ミリオが「行ってこーい!!」って叫ぶ。
ねじれも「捕まえてこい〜!!」って手を振る。
教室が一気に盛り上がる。
そして。
二人は走り出した。
廊下。
階段。
玄関。
外へ飛び出す。
大雨。
バシャバシャと水を跳ねながら道路へ。
「タクシー!!」
ユカリが必死に手を上げる。
キキーッ。
一台止まった。
二人は飛び込むように乗車。
「空港までお願いします!!」
タクシーが走り出す。
でも。
雨。
平日の朝。
最悪のタイミング。
道路は完全に渋滞していた。
動かない。
少し進んでは止まる。
ユカリは時計を見る。
焦る。
「やばい……」
環も窓の外を見る。
このままだと間に合わない。
そして数分後。
ユカリが突然言った。
「ここでいいです!!」
「えっ」
運転手も驚く。
でもユカリはもう財布を出していた。
「ありがとうございました!!」
ドアが開く。
次の瞬間、大雨の中へ飛び出す。
「ユカリ!?」
環も慌てて降りる。
走り出すユカリ。
全力。
水たまりなんて気にしない。
髪も制服も一瞬でびしょ濡れ。
環も追いかける。
大雨。
ずぶ濡れ。
それでも。
二人は空港へ向かって走り続けた。