第21章 転入生
傷を治し終えたユカリは、そっと手を離した。
凛の傷はもう綺麗になっている。
でも。
二人の間にはまだ言葉にならない感情が残っていた。
凛は視線を落としたまま。
何も言わない。
そんな凛を見て。
ユカリは、ゆっくり口を開いた。
「ちゃんと嬉しかった」
凛が顔を上げる。
ユカリは真正面から凛を見る。
逃げずに。
まっすぐ。
「凛」
「会いに来てくれて、ありがとう」
その言葉。
凛の目が大きく揺れた。
ずっと。
会いたかった。
でも。
会うのが怖かった。
忘れられてたらどうしよう。
ヒーローを諦めた姿を見せたらどうしよう。
いろんな感情を抱えて来た。
でも、今。
ユカリは笑ってくれている。
その瞬間。
モニタールームの空気が限界を迎えた。
「くっ……泣けるぜ……!」
天井を見上げる切島は男泣き。
「くそっ……!こんな感動させられるとは聞いてねぇっ!」
上鳴は涙と鼻水でぐしゃぐしゃ。
「うぅぅぅ〜〜〜!!八神くんよかったねぇぇぇ!!」
芦戸は大声で大号泣。
峰田まで目を潤ませている。
「な、なんか青春って感じでぇ……」
「……うるせぇ峰田お前が言うな」
瀬呂も目元を押さえながらツッコんでいる。
ミリオは大笑いしながら涙目。
「いやぁ〜!!若いっていいねぇ!!」
ねじれも目を潤ませている。
「凛くんよかったぁ〜……!」
その横で。
環は静かに息を吐いた。
少しだけ安心した顔で。
そして。
モニタールームの入口にいる爆豪と轟。
二人はまだ何も知らない。
でも、何も言わない。
わかったからだ。
凛の表情が、どこか前を向いている、と。
凛は周囲の騒がしさを聞きながら、小さく笑った。
「……うるせぇ」
でも。
その顔は。
日本に来た時より、ずっと穏やかだった。