第6章 重症
「轟くん、それユカリ先輩かなりドキドキしてると思うよ……」
「本当か?」
「うん」
轟は少し黙る。
そしてぽつり。
「……嬉しい」
その顔があまりにも自然に柔らかくなるので、出久は思わず心の中で叫んだ。
(恋してるーーーー!!!)
すると轟が真面目な顔に戻る。
「でも爆豪もいる」
「ま、まあ確かに……」
最大の問題。
最近の爆豪は、ユカリ関連になると本当に分かりやすい。
「昨日も先輩のことで機嫌悪かったぞ」
「そ、そうなんだ……」
「譲る気はないが」
静かな声。
けれど目は真剣だった。
「先輩の隣にいてぇ」
その言葉には迷いがない。
出久は少し驚く。
轟って、こんなに感情を前に出すタイプだったっけ。
恋ってすごい。
出久がぽつりと言う。
「轟くん、すごく変わったよね」
「変わった?」
「前よりいっぱい笑うし、感情出るし」
「……そうか」
轟は少し考えてから、小さく笑った。
「先輩といると楽しいからかもしれない」
完全に惚気だった。
その時。
「おい半分野郎、何してる」
低い声。
二人が振り返る。
廊下の向こうに、爆豪が立っていた。
しかも顔が怖い。
「相談だ」
轟、正直。
出久が嫌な予感で震える。
「……何の」
「ユカリ先輩のこと」
沈黙。
数秒。
爆豪の額に青筋が浮いた。
「はァ?」
「好きすぎてどうしたらいいか分からないって相談してた」
「轟くん!?!?」
全部言った。
出久、絶望。
爆豪はしばらく黙っていたが、やがて盛大に舌打ちした。
「……ンなもん俺だって分かんねェよ」
「え」
「先輩のことで頭おかしくなるの普通じゃねェだろ」
「かっちゃんも重症だね!?」
出久、確信。
しかも本人たち、かなり本気。
(ユカリ先輩、大変だ……)
雄英トップクラスに面倒で一途な二人に、本気で愛されている。