第6章 重症
同じ頃。
1年A組の教室では、別の意味で事件が起きていた。
「緑谷」
「ひゃい!?」
突然名前を呼ばれ、 緑谷出久は勢いよく振り返った。
教室の後ろ。
そこに立っていたのは、轟。
しかも真顔。
嫌な予感がする。
「ちょっといいか」
「う、うん……?」
数分後。
人気のない廊下。
出久はなぜか正座したい気分になっていた。
轟が腕を組みながら、深刻そうに考え込んでいるからだ。
「……俺、多分かなり重症かもしれない」
「えっ」
「ユカリ先輩のこと」
出久、理解。
(始まったーーーー!!)
「え、えっと……ど、どうしたの?」
轟は静かに窓の外を見る。
「昨日、先輩が“彼氏”って言ってた瞬間、誰か思い浮かべてた」
「う、うん」
「それが気になって寝れなかった」
「重症だね!?」
轟は真剣に頷いた。
「今までこんなことなかった」
「そ、そうなんだ……」
「先輩が他の男と話してるだけでモヤモヤするし」
「うん……」
「笑ってると嬉しい」
「うん……」
「かわいい」
「うん……」
「好きすぎてどうしたらいいか分からない」
「うわぁ……」
出久、顔を覆う。
青春だった。
轟はかなり本気で悩んでいる。
「緑谷、恋愛ってどうしたらいいんだ」
「ぼ、僕に聞く!?」
「お前こういうの詳しそうだから」
「どこ情報!?」
轟は少し考えてから言う。
「分析してるだろ」
「それヒーローだけだから!!」
だが轟は納得していない顔だった。
「でも俺、自分でも抑えられなくなってきてる」
「え」
「最近、先輩見ると“好き”って言いたくなる」
「言ってるよね!?」
「昨日も言った」
「知ってる!!」
しかも割と頻繁に。
出久は頭を抱えた。