第21章 転入生
静かな空間で。
八神凛は、ただ立ち尽くしていた。
頭の奥。
蘇る記憶。
幼稚園。
暖かい日差し。
小さな園庭。
そこにいた。
笑顔のユカリ。
『りん!りん!』
『なに』
『りんはね、つよいからヒーローになれるよ!』
小さな凛は目を瞬かせる。
『なってほしいの?』
ユカリは満面の笑みで頷いた。
『うん!』
『それでね、たくさんの人をたすけてあげるの!』
凛は少し考えて。
ぽつりと言った。
『おれはユカリをまもれたらそれでいい』
すると。
ユカリは困ったように笑った。
『それもうれしいけど』
『わたしもヒーローになりたいもん』
小さな手。
ユカリが凛へ差し出す。
『だからね!』
『いっしょにヒーローになって、たくさんの人をたすけてあげよう!』
『やくそく!』
その笑顔。
その声。
忘れてた。
ずっと。
こんなにも大事な記憶なのに。
どうして。
よりにもよって今。
胸が苦しい。
本当は。
諦めたくない。
ヒーローを。
まだ。
なりたい。
まだ――。
間に合うだろうか。