第21章 転入生
出久は息を荒げながら、ゆっくり立ち上がった。
足が震える。
ポイントもかなり削られている。
それでも。
目は逸らさない。
真正面から凛を見る。
凛は黙ったまま出久を見ていた。
出久は息を整えながら言う。
「……僕も最初は知らなかった」
「………」
「君が転入してきて、君のお父さんがすごい人だって知って」
「ヒーロー研究の材料になるかと思って調べたんだ」
苦しそうに呼吸しながら。
それでも言葉を続ける。
「そしたら見つけたんだ」
「――あの記事を」
その瞬間。
凛の目がわずかに揺れた。
***
それは。
凛が中学一年生の時。
アメリカ。
朝の通学路。
まだ幼さの残る凛は、いつものように学校へ向かっていた。
だが。
運が悪かった。
突然始まった。
ギャング同士の抗争。
怒号。
銃声。
逃げ惑う人々。
その中に。
凛はいた。
乾いた銃声が響く。
一発。
二発。
三発。
血。
倒れる小さな身体。
――意識不明の重体。
ニュースは大きく報じた。
“将来を期待されたヒーロー候補生、重傷”。
命は助かった。
だが。
代償は大きかった。
右腕。
重い障害が残る可能性。
将来的な機能不全。
医者の宣告。
周囲はざわついた。
将来有望。
天才。
羨望。
期待。
ずっと向けられてきた視線。
でも。
気付けば。
その周囲から人が消えていた。
“壊れた天才”。
そんな目で見られるようになった。