第21章 転入生
すると、凛がぽつりと漏らす。
「ユカリ」
「ん?」
「まだハンバーグ好きなの?」
「うん、大好き」
あの頃のように、子供っぽく笑うユカリ。
「ほんと?」
「うん」
爆豪の眉間に皺が寄る。
「なんで先輩の好きなもん知ってんだよ」
「幼稚園の頃、大好物だったから」
「まった幼稚園!!」
キレる爆豪を見て、ユカリは苦笑いする。
「凛、昔の話ばっかりだね」
「昔からユカリが好きだから」
「さらっと言わないで!?」
ユカリの顔が赤くなる。
その様子を見て轟も静かに口を開く。
「ユカリ先輩」
「?」
「俺もハンバーグ好きです」
「うん、美味しいよね。あ、でも轟くんが一番好きなのは蕎麦だよね?」
「……覚えてるんですか?」
「もちろん。しかも温かくないやつ」
好きな人が。
好きな食べ物を覚えててくれた。
たったそれだけのこと。
それでも。
轟の心はじんわり温かくなった。
「俺ァ辛ぇのがいい」
爆豪も負けじと言う。
「知ってる」
ユカリは笑いながら爆豪の顔をのぞいた。
「この前いっぱい七味かけてたでしょ?」
「…………」
そっぽ向く爆豪。でも耳は赤い。
覚えてる。
ちゃんと見てる。
だから二人とも弱い。
凛は静かにそれを見ていた。
そして思う。
――やっぱり、ユカリはあの頃のままだ。
誰に対しても。
ちゃんと向き合う。
だからみんな好きになる。