第20章 保健室当番
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六時間目。
保健室は驚くほど静かだった。
窓の外では授業の声が聞こえる。
でも中は穏やかだ。
ユカリは椅子に座ったまま、ふぅっと息を吐いた。
「……思ったより平和だったかも」
怪我人もそこまで多くない。
軽傷ばかり。
みんなちゃんと節度を守ってくれた。
ユカリが少し伸びをすると、白衣の袖が揺れる。
「この時間終わったら帰れるなぁ……」
そう呟いた、その時。
ガラッ!!
勢いよく保健室の扉が開いた。
「だから!!」
聞き慣れた怒鳴り声。
「俺ァ平気だっつってんだろデク!!」
「あっ、でも!オールマイトがちゃんとリカバリーガールに見てもらわないとダメだって――」
入ってきたのは出久。
そしてその後ろに、腕を乱暴に掴まれた爆豪。
「リカバリーガールお願いします!」
出久が勢いよく前を向いて――
止まった。
「…………え?」
白衣姿のユカリ。
保健室。
静かな空気。
出久はフリーズ。
ユカリもぱちぱち瞬きした。
「出久くん?」
「えっ、え!? ユカリ先輩!?!?」
声が裏返る。
そして。
その後ろにいた爆豪が数秒遅れて前を見る。
「……は?」
停止。完全停止。
思考が止まった。
白衣。
保健室。
ユカリ。
意味が繋がらない。
ユカリは苦笑した。
「あ、えっと……今日は保健室当番で」
じっとユカリを見る爆豪。
白衣姿。
柔らかく結ばれた髪。
いつもと少し違う雰囲気。
しかも保健室。
爆豪の脳がゆっくり処理を始める。
(……は?)
(何だこれ)
(可愛すぎねェ?)
思考がやっと追いついた瞬間。
ユカリが立ち上がる。
「あれ、怪我したの?」
「………」
「爆豪くん?」
名前を呼ばれて爆豪はやっと反応する。
「……おいデク」
「は、はい!?」
「なんで言わなかった」
「僕も今知ったんだけど!?」
ユカリは苦笑しながら近づいてくる。
「腕?」
「……別に大したことねぇ」
「でも見せて?」
近い。
すごく近い。
出久はすぐに察する。
(あっこれダメだ)