第20章 保健室当番
「へぇ〜……?」
意味深な声。
環が嫌な予感を察知して肩を震わせた。
「……こんにちは」
「こんにちはじゃないわよ」
ミッドナイトはニヤニヤしながら近づいてくる。
「なにこの空間」
「空間?」
ユカリがきょとんとする。
「落ち着きすぎじゃない?」
「そうですか?」
「そうよぉ!」
ミッドナイトは完全にテンションが上がっていた。
この教師。
なぜか生徒の恋愛事情を異常に把握している。
しかも勘が鋭い。
だからこそ、今の空気を感じ取っていた。
“幼馴染特有の距離感”。
言葉にしなくても通じる空気。
自然に隣にいる感じ。
しかもユカリは白衣。
環は保健委員。
シチュエーションが強い。
ミッドナイト、内心大盛り上がり。
(これはユカリ×環派が泣いて喜ぶやつ……!!)
環は露骨に嫌そうな顔をした。
だが、ユカリは相変わらず分かっていない。
「ミッドナイト先生、どうしたんですか?」
「ん〜? ちょっと書類届けに来ただけ♡」
そう言いながらも。
視線がめちゃくちゃ二人を見ている。
環は心の中で思う。
(帰りたい……)
ミッドナイトは机へ書類を置きながら、さりげなく探りを入れる。
「二人きりだったの?」
「……まあ」
「へぇ〜♡」
「別に普通です……」
「普通ねぇ?」
ミッドナイトはにやぁっと笑う。
「幼馴染っていいわよねぇ〜」
「……」
「昔からお互いのこと知ってて〜」
「……」
「安心感あって〜」
「……」
「自然に隣いられて〜」
「先生」
環が真顔で止めに入る。
「やめてください」
「なによぉ〜!」
ユカリは苦笑していた。
「ミッドナイト先生、環困ってますよ」
「その“環”呼びも良いのよねぇ……」
「はい?」
「無自覚って罪だわ……」
だが、次の瞬間。
ミッドナイトは保健室を見回して首を傾げる。
「あれ?思ったより今日は静かね?」
ユカリはのんびり答える。
「みんなちゃんと約束守ってくれてるみたいで」
「あ〜……」
ミッドナイト、察する。
「まだバレてないのね」
環は心の中で同意する。
(そう)
(まだ)
問題は“まだ”バレていないことなのだった。