第20章 保健室当番
教室の空気が微妙にざわつく中。
「ま、待て待て!」
慌てて声を上げたのは切島だった。
物間が去った扉を見ながら、嫌な汗が流れる。
(やっべぇ……!!)
絶対勘づき始めてる。
特に爆豪と轟。
二人とも妙に静かだ。
それが逆に怖い。
切島は無理やり笑った。
「ま、まあいつものことだろ!気にすんなって!」
爆豪がじろりと見る。
「……テメェなんか知ってんな」
「えっ!? し、知らねぇ知らねぇ!!」
動揺。
轟も静かに口を開く。
「切島、目泳いでるぞ」
「泳いでねぇ!!」
完全に泳いでいる。
切島の脳裏に、朝の保健室が蘇る。
――――――
治療を終えたあと。
白衣姿のユカリが少し困ったように笑った。
『あ、切島くん』
『はい?』
『今日私がここにいることは内緒ね?』
『え?』
『相澤先生に言われてて』
『誰にも?』
『うん』
そう言ってユカリは苦笑した。
『なんか大変になるからって』
切島、その時点で理解。
(あーーー……)
(そりゃそうなる)
だから頷いた。
『任せてください!』
『ありがとう』
にこっと笑われて。
漢・切島は“絶対黙る”を決意したのだ。
――――――
現実へ戻る。
今。
めちゃくちゃバレそう。
爆豪が机に肘をつきながら睨む。
「切島ァ」
「な、なんだ!?」
「吐け」
「いやだから何もねぇって!」
轟も追撃。
「物間があんな煽り方する時って、大体A組が知らない何かがある時だ」
「鋭いな!?」
「しかも切島、今日朝どっか行ってた」
「う」
「保健室」
沈黙。
爆豪が立ち上がる。
「保健室で何があった」
「な、何も!?」
「何もねぇ奴がその顔するかボケ」
轟まで立ち上がる。
「切島、言え」
圧。
怖い。
切島は必死で視線を逸らした。
(やべぇ……!!)
でも。
約束した。
ユカリ先輩に。
しかも。
あの笑顔で「内緒ね?」って言われたら無理だ。
裏切れない。
するとその時、教室の扉が開いた。
「次移動教室だぞー」
瀬呂の声。
空気が一瞬切れる。
切島、心の中で泣きながら思った。
(助かったぁぁぁ……!!)
だが。
爆豪と轟の目は、完全に“あとで聞き出す”目だった。