• テキストサイズ

【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第20章 保健室当番



「うん、これくらいなら大丈夫そう」

ユカリは心操の手首をそっと見ながら言った。

軽い捻り。

炎症もそこまで酷くない。

これなら治せる。

ユカリは静かに息を整えて、心操の手首へ触れた。

ふわり。 

淡い光みたいなものが指先に滲む。

派手ではない。

でも、じんわりと熱が引いていく感覚があった。

心操は思わず目を瞬かせる。

「……すげ」

「痛くない?」

「さっきより全然」

ユカリはほっとしたように笑った。

「よかった」 

静かな保健室。

時計の音だけが小さく響く。

心操は治療されながら、なんとなくユカリを見ていた。

近い。

かなり。

白衣姿のユカリはいつもより少し大人っぽく見える。

でも笑うと柔らかい。

優しい。

そういえば。

今まで、この人とこんな距離で話したことあっただろうか。

思い返す。

体育祭。

廊下ですれ違った時。 

他の誰かと一緒にいる姿。

顔を合わせれば挨拶くらいはする。

でも。

こんな風に、一対一で。

静かな空間で。

自分だけを見て話してくれることなんて――なかった。  

「朝練?」  

ユカリは治療しながら話しかける。

「……はい」

「頑張ってるんだね」

「まあ」

ぶっきらぼうに返す。 

けど。

不思議と居心地は悪くなかった。

むしろ落ち着く。

ユカリは少し首を傾げる。

「痛みまだある?」

「いや、もうほとんどないっす」

「ほんと? よかった」

嬉しそうに笑うその笑顔を見て。

心操はふと思う。

(……そりゃ人気あるよな)

無理だ。

これは。

近くで接したら、みんな好きになる。

騒がれる理由が分かる。

しかも本人は全然自覚してない。

ユカリは手を離した。

「これで大丈夫だと思う。でも今日は無理しないでね?」

「……はい」

心操は立ち上がる。

でもすぐには動かなかった。 

ユカリが不思議そうに見る。

「どうしたの?」

「……いや」

心操は少しだけ視線を逸らした。

「保健室、今日混みそうっすね」

ユカリは昨日の相澤の言葉を思い出して苦笑する。

「そんなことないと思うけどなぁ」 

(いや絶対来る)

そう確信して、心操は保健室を後にした。


/ 252ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp