第20章 保健室当番
1年C組。
「お、心操。リカバリーガールもう学校来てた?」
教室へ戻ってきた心操を見て、クラスメイトが声をかける。
「…………」
心操は一瞬だけさっきの保健室を思い出した。
白衣姿のユカリ。
近い距離。
優しい声。
あの空間。
そして何より。
(あれ知られたら絶対人来る)
だから心操は自然を装って答えた。
「もう来てた」
クラスメイトは特に疑わない。
「1限変更すんだってよー」
「ん」
席へ向かいながら、心操は小さく息を吐いた。
(黙っといた方がいいな)
本能が告げている。
あれは秘密にしておくべきだ。
特に1年には絶対に。
***
その頃。
保健室。
ガラッ。
再び扉が開いた。
「失礼しまーす!」
元気な声。
入ってきたのは切島だった。
「お、リカバリーガール……じゃねぇ?」
言いながら中へ入ってきた切島が止まる。
白衣姿のユカリ。
数秒、固まる。
「……え?」
ユカリはにこっと笑った。
「おはよう切島くん」
「お、おはようございます!」
反射で背筋が伸びる。
切島は状況を理解しようとする。
「え、先輩なんでここに!?」
「今日は保健室当番なんだ」
「保健室当番!?」
声が大きい。
ユカリは苦笑する。
「どうしたの? 怪我?」
「あ、いや! 朝練でちょっと擦っただけっす!」
見せられた腕には軽い擦り傷。
ユカリは「なるほど」と頷いた。
「これならすぐ治るよ」
「え?」
「座って?」
自然に椅子を引かれて切島は座る。
なんかもう断れない。
ユカリはそのまま切島の腕へ触れた。
ふわっと傷が薄れていく。
切島は目を見開く。
「す、すげぇ……!」
「はい、終わり」
「え、もう!?」
「軽い怪我だけだからね?」
ユカリは笑う。
近い。
優しい。
しかも白衣。
切島は思う。
(これA組に知られたらヤバくね!?)
特に爆豪と轟。
絶対来る。
100%。
切島の脳裏に、体育祭でユカリを巡っていた二人の姿が浮かぶ。
(いやマジでヤバいってこれ……)