第15章 体育祭
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後夜祭。
昼間の熱気とは違う、柔らかな灯りが校庭を包んでいた。
音楽が流れ、生徒たちがそれぞれのペアと踊っている。
その中心の一組。
ユカリと環。
昔から何度も並んできた二人だからこそ、ステップは自然だった。
息もぴったり。
周囲から見れば、本当にお似合いのペア。
でも。
環は今日一日でだいぶ精神を削られていた。
「……疲れてるね」
ユカリがくすっと笑いながら言う。
環は即答した。
「ユカリのせい」
「えぇ!?」
ユカリが目を丸くする。
「俺、今日ずっと命の危機感じてた」
「そんな大袈裟な……」
「大袈裟じゃない」
真顔だった。
ユカリは困ったように笑う。
その顔を見て、環は小さく息を吐いた。
(昔から変わらない)
幼稚園。
小学校。
気づけば、いつも隣にいた。
泣きそうな時も。
しんどい時も。
周囲に馴染めなかった時も。
ユカリだけは、当たり前みたいに隣に座っていた。
“環”って呼んで笑っていた。
環は静かに目を細める。
「……俺さ」
「ん?」
「ユカリには、幸せになってほしいって思ってる」
ゆっくり落ちる声。
ユカリは少しだけ驚いた顔をする。
環は視線を遠くへ向ける。
脳裏に浮かぶのは、昼間ずっと騒がしかった二人。
爆豪勝己。
轟焦凍。
どちらも不器用で。
分かりやすくて。
でも、ユカリを見る目だけは本気だった。
「あの二人は」
環がぽつりと続ける。
「ユカリを大事にしてくれる」
「…………」
「わかるんだよ」
静かな声。
「ずっと見てきたから」
誰が本気で。
誰がちゃんと大切にしてくれるのか。
環にはなんとなく分かる。