第15章 体育祭
「ほな、そろそろ行くわ!」
体育祭の熱気が続く中、ファットガムが大きく手を振る。
「仕事ついでに寄っただけやったけど、相変わらず賑やかやなぁ!」
「お疲れ様です!」
ユカリたちが見送る中、ファットガムは最後に振り返った。
そして。
満面の笑みで、最後の爆弾を落とす。
「ほなユカリちゃん!彼氏に困ったら、いつでも環貸したるで!」
沈黙。
その場の空気が、また静かに死ぬ。
「ファット」
環の声が人生で一番低い。
「頼むからもう帰ってくれ」
「ははは!」
ファットガムは豪快に笑うだけ。
ユカリは「ち、違いますからね!?」と慌てるし、ねじれは大爆笑。
ミリオは肩を震わせている。
そして。
背後。
爆豪と轟。
無言。
それが逆に怖い。
環はもう完全に諦めた顔で空を見上げた。
(今日を生き延びたら褒めてほしい)
***
その後。
ファットガムは雄英高校を後にしながら、一人で笑っていた。
「いや〜青春やなぁ」
体育祭の歓声が遠くなる。
でも脳裏には、さっきの光景がずっと残っていた。
ユカリを真ん中にして、視線を向ける二人。
あれはもう誰が見ても分かる。
「まぁ……」
ファットガムはふっと目を細める。
「ユカリちゃんの彼氏になるんは、あの二人のどっちかやろなぁ」
爆豪勝己。
轟焦凍。
もちろん、ファットガムが知らないわけがない。
雄英でも有名。
そしてプロヒーロー側でも、すでに話題になっている存在。
爆豪の圧倒的な戦闘センス。
轟の安定感と才能。
どちらも将来を期待されている。
「しかもあの二人、ガチやったなぁ」
軽い憧れとかではない。
本気で大事にしている目だった。
ファットガムは頭をかきながら笑う。
「そら環も逃げたなるわ」
最後に空を見上げる。
「ま、若いんやし好きにやったらええ」
その言葉と一緒に、ファットガムは雄英を後にした。
一方その頃、グラウンドでは。
まだ環が爆豪と轟の視線に耐えていた。