第15章 体育祭
ミリオはスマホの写真を見ながら続けた。
「ユカリって入学当初から目立ってたんだよ」
「顔も可愛かったし、雰囲気も柔らかいし、しかもちゃんと強かったから」
ねじれがうんうん頷く。
「先輩たちすっごかったよね〜!」
「毎日のように声かけられてた!」
ユカリが「ちょっとねじれ!?」と止めようとするが、もう遅い。
ミリオは完全に昔話モードだった。
「休み時間とか特にね」
「“連絡先教えて”とか、“今度飯行こう”とか、“付き合ってる人いる?”とか」
「まあ〜いっぱい来てた!」
1年A組、ざわつく。
「えっ」
「そんなレベルだったんすか……」
切島が素で驚く。
上鳴も納得顔。
「いやでも分かる……」
ファットガムは豪快に笑う。
「そらモテるやろ!今見ても可愛いもんなぁ!」
ユカリはもう完全に顔を覆っていた。
「やめてくださいほんとに……」
だがミリオは笑いながら首を振る。
「でもさ、ユカリって全然靡かなかったんだよね」
その言葉で、少し空気が変わる。
「どれだけアプローチされても、“ちゃんと自分の距離感”持ってた」
「優しいけど、流されないんだよ」
環も静かに頷く。
「……昔からそう」
「嫌なことは嫌って言うし、必要以上に期待も持たせない」
「でも相手を傷つけないようにする」
ぽつりと落ちる言葉。
それは長く一緒にいたからこそ知っている声音だった。
ねじれが笑う。
「芯あるんだよね〜!」
「ふわふわしてるように見えるのに!」
ユカリは少し困ったように笑う。
「そんなことないよ」
「あるよ」
ミリオが即答した。
「だから周りも本気になるんだと思う」
その瞬間。
爆豪と轟の視線が、自然とユカリへ向く。
あの“誰にでも優しいだけじゃない感じ”。
ちゃんと自分を持っているところ。
だからこそ、追いかけたくなる。
爆豪は小さく鼻を鳴らす。
「……そりゃそうだろ」
轟も静かに言う。
「納得した」
ユカリはそんな二人の視線に気づいて、少しだけ照れたように笑った。
その顔を見て。
二人ともまた静かにダメージを受けていた。