第15章 体育祭
ファットガムは、まだ気づいていない。
自分が地雷原のど真ん中を、満面の笑みで歩いていることに。
「そういやユカリちゃんと環、昔から息ぴったりやもんなぁ!」
その言葉に、環が嫌な予感しかしない顔をする。
(やめてくれ)
だが、祈りは届かない。
ファットガムは楽しそうに続けた。
「1年坊主らは知らんか!去年と一昨年のカップルコンテスト、こいつらペアで優勝しとるんやで!」
一瞬。
本当に、一瞬だけ。
グラウンド周辺の音が消えた気がした。
「……は?」
最初に反応したのは上鳴。
「え、何それ初耳なんだけど!?」
切島も固まる。
「2年連続!?」
出久も目を丸くする。
「そんな歴史が……!?」
そして。
静かに。
ゆっくりと。
二人の視線が環へ向く。
爆豪。
轟。
環、無事死亡。
「………違う、聞いてくれ」
即座に否定へ入る。
だがファットガムは止まらない。
「いや〜あれ盛り上がっとったわぁ!」
「お似合いやったしなぁ!」
「本人ら全然乗り気ちゃうかったけど!」
「学校側に“盛り上げるために頼む!”って押し切られて出たんや!」
ミリオが笑いながら頷く。
「懐かしいねぇ!」
ねじれも楽しそう。
「めっちゃ歓声すごかったよね〜!」
ユカリは「あはは……」と完全に困り笑い。
「いや、ほんとにそういう感じじゃなくて……」
必死に補足する環。
だが。
今の爆豪と轟に、その説明はほぼ届いていない。
爆豪が低く呟く。
「……2年連続」
轟も静かに確認する。
「優勝」
環は本気で帰りたくなった。
(終わった)
(完全に誤解された)
(いや事実だけど誤解されてる)