第15章 体育祭
グラウンドの空気が止まっているみたいだった。
爆豪と轟が差し出した手。
その先で、ユカリは少しだけ困ったように笑う。
「……2人とも、本当に私でいいの?」
一瞬の間。
でも、答えは最初から決まっていたみたいに、二人は迷わない。
爆豪は短く吐き捨てるように。
「当たり前だろ」
轟は静かに、それでもはっきり。
「先輩以外いない」
その言葉に、風が一度だけ止まった気がした。
ユカリは、ふっと力を抜くように笑う。
「……そっか」
そして――
「いいよ、行こう?」
そのまま、二人の手を取った。
その瞬間。
グラウンドが一気に爆発したような歓声に包まれる。
「うわあああああああ!!」
「決まったあああああ!!」
「これもう競技じゃないだろ!!」
実況のプレゼント・マイクも、完全にテンションが振り切れる。
「おいおいおいおい!!これは借り物競争だよな!?借り物だよな!?いや違うな!!これはもう――運命の回収だァァァ!!」
観客席も職員席も、完全に騒然。
ねじれは両手を振りながら笑う。
「わ〜〜!すごいすごい!!」
ミリオは大爆笑。
「いや最高すぎるでしょ!」
そして環は、ただ一言。
「……帰りたい」
だがもう遅い。
テントから歩き出した三人に向けて、さらに歓声が重なる。
爆豪は前だけを見ている。
轟も同じ方向を見ている。
そしてユカリは、少しだけ二人の手を握り直す。
それだけで、場の空気がさらに熱を帯びる。
実況は叫ぶ。
「これは記録より記憶に残る借り物競争だーー!!」
体育祭はまだ続いているのに。
この瞬間だけは、すでに“結末”みたいな盛り上がりをしていた。