第15章 体育祭
ゴールラインを越えたあとも、三人はそのまま立ち止まっていた。
ユカリを真ん中にして、両側に爆豪と轟。
手はまだ繋がれたまま。
歓声が背後で鳴り続ける中、空気だけがそこだけ違う緊張を帯びていた。
爆豪が先に口を開く。
「つーか、先輩の運命の相手は俺だろ」
即座に轟が返す。
「いや、ユカリ先輩の相手は俺だと思う」
一歩も引かない。
視線がぶつかる。
火花が見えそうなほどに、空気が張り詰める。
「チッ……譲る気ねぇのかよ」
「譲る理由がない」
完全に平行線。
その間に挟まれたユカリは、少しだけ頬を膨らませて二人の手をぎゅっと握り直した。
「も〜……」
そのまま一言。
「これ以上喧嘩するなら、手繋がないからね!」
ピタリ、と空気が止まる。
一瞬の沈黙。
そして――
爆豪と轟の視線が同時にユカリへ向く。
その姿が、あまりにも“怒っているのに可愛い”という状態で。
爆豪が小さく息を吸って、ぽつりと漏らす。
「……可愛すぎて死ね」
「は?」
轟が珍しく素で反応する。
観客席が一瞬止まって、次の瞬間爆発したように笑い出す。
「今の何!?爆豪今の何!!」
「語彙どこいった!!」
実況のプレゼント・マイクも爆笑混じりに叫ぶ。
「おい今のは名言なのか事故なのかどっちだァァァ!!」
ユカリは一瞬固まってから、耳まで赤くして小さく笑う。
「……もう」
そのまま、二人の手を離さないまま軽く前へ歩く。
「じゃあ行こ。次の競技もあるんだから」
その一言で、爆豪も轟も同時に黙る。
ただし、手は離さない。
周囲はまだ大騒ぎのまま。
でも三人の間だけは、不思議と静かにまとまっていた。
そしてその光景を見た全員が、同じことを思っていた。
(これ、勝ち負けとかもう関係ないやつだな)