第4章 刺激
気付けば神威の足元には、鮮血が広がっていた。
それでも動じることなく、彼は笑ったままだった。
「時雨。こんな時間に何処に行ってたの?」
「え、、!?あ…」
いきなりの質問に思わず口ごもる。
そんな私の態度が気に入らなかったのか、神威の声色が変わった。
「言えないの?」
「え、いえ!そんな事ありません!お店の後に、お客さんと飲みに行っていただけです…」
何故だか言い訳をしている気持ちになった。
「へぇ。そうなんだ。二人きりで?」
「あ、は、はい…」
「そぅ。」
「……。」
どうしよう…怒らせた?
アフターも仕事のうちだし、ちゃんと説明すれば……ん?
俯いた視線の先、したたる血が広がる地面に何か落ちているのが目に入った。
街灯のない薄暗い中、私は目を凝らしてみる。
そんな私に気づいた神威が口を開いた。
「気になる?」
「え?あ、あの、それは一体…」
「時雨が悪いんだよ。(ニコッ)」
そう言って地面から拾い上げたのは、僅か数分前まで私が一緒にいた、清水の旦那の変わり果てた姿だった。
「ひぃ……!!」
思わず後退る私の手首を、素早く神威が掴んだ。
ぬるりとした感触が伝わり、私の手首もあっという間に血に染まった。