第6章 終わりと始まり
「時雨ちゃん!」
待ち合わせ場所にいた加賀さんは、いつもよりも楽しそうだった。
そんな加賀さんを見ていたら、神威への不安も薄れていった。
『いつものお礼だから』と、加賀さんは、私の行きたい所や見たい所を、文句一つ言わずに付き合ってくれた。
吉原が全ての私にとって、江戸の街は新鮮で、何処で何をしてても飽きないものだった。
「時雨ちゃん、楽しいかい?」
「はい!とても楽しいです!」
「そうかい。僕はね、時雨ちゃんには、こうして自由に生きて欲しいと思ってるんだ。」
「自由に?」
「僕は、君を吉原から連れ出したいと思ってるんだ。」
吉原から連れ出す!?
加賀さんがそんな事を考えていたなんて…。
返す言葉が見つからなくて、私は黙ってしまった。
加賀さんとならきっと穏やかで温かい生活を送れるような気がする。
だけど…。
「いきなりごめん!時雨ちゃんを困らせちゃったよね。」
「い、いえ!違うんです…その…ちょっとびっくりしたと言うか…」
「ゆっくり考えてもらっていいからね。時雨ちゃんの心が決まったら、答えを聞かせて欲しいんだ。」
「はい…。」