第2章 吉原
地下都市、吉原。
明けることのない常夜の街。
そう呼ばれていたのは、もう昔のこと。
夜の王・鳳仙の鎖から解かれたこの街は、
どこの街とも変わらない、ごく普通のありふれた街。
「時雨!時間だよ!」
「ん……?」
眠い目をこすりながら、声の先へ視線を向けると、呆れ顔のママが立っていた。
「全く。あんたは本当に寝起きが悪くていけないよ。またアフターかい?」
「……うん。」
「まぁ、店としちゃぁ有難いことだからいいんだけどさ。開店時間には出てきておくれよ!」
「……うん。」
「じゃあ、頼んだよ!」
私が勤めてるのは、いわゆるキャバクラ。
夜王の呪縛から解かれた今も、吉原には夜の店がひしめいている。
夜の世界から足を洗う女もいたけれど、私は夜の吉原に未だ繋がれたまま。
陽の光よりも、ネオンの光の方が性に合うみたい。