第6章 十一年後の君に捧ぐ、最初の敬礼
が消えた直後だった。超大型巨人の襲撃により、シガンシナ区の壁が破壊――ウォール・マリアが陥落した。
壁内は一瞬で地獄と化し、俺は人類の命運を背負って最前線へ駆り出された。
怒涛の戦いの中、俺の頭を支えていたのは、あいつが残した最後の言葉だけだった。
あいつが過去に戻って目を覚ますなら、それは計算上、俺がいる今のはずだ。
だが、10年も眠り続けていた身体がすぐに動くはずがない。
『リヴァイ、療養所からの報告だよ。彼女、本当に目を覚ました。でも、寝たきりだったせいで筋肉が落ちて、自力で立ち上がることもできない状態らしい。リハビリには最低でも1年はかかるって』
ハンジからそう知らされた日から、さらに1年が経った。
地獄のような壁内大混乱期を駆け抜け、総人口の2割を失う絶望を味わいながらも、俺はあいつが己の足で立つのをじっと待ち続けた。
あいつが消えてから、1年と少し。
俺は今日も、いつも通りカップのフチを上からガシッと鷲掴みにして、冷めた紅茶を口に運ぶ。
その時、執務室の木扉が、静かにノックされた。
「――入れ」