第6章 十一年後の君に捧ぐ、最初の敬礼
だが、奇跡のような時間は長くは続かなかった。
の身体が時折、陽炎のように透けるようになった。
頭を打って一時的に魂が未来へ弾き出されていただけの彼女に、元の時代へ引き戻されるタイムリミットが迫っていたのだ。
「リヴァイ、私、戻っちゃうみたい。835年の、昏睡状態の私の体へ」
消えかけるを、俺は壊れるほどの力で抱きしめた。
人類最強なんて肩書き、この腕から消えゆく女一人引き留められなけりゃ何の意味もない。
「ふざけるな……! 俺を置いてどこへ行く!」
「泣かないで。……私ね、目を覚ましたら、絶対に歩いてあなたのところへ行くから。10年経って、私が今のあなたと同じ年齢になったら、必ず……約束だよ、リヴァイ」
そう言って微笑んだ瞬間、の身体は光の粒子となって、俺の腕の中から完全に消え失せた。
残されたのは、彼女が半分だけ口をつけた、冷めかけた紅茶だけだった。