第4章 紅茶の香りは前世の記憶
「……いや。美味い。……丁度いい」
先生の声は、いつになく微かに震えていた。
彼はそれ以上、私の成績についての説教をしなくなった。
ただ、愛おしそうに、そしてどこか哀しそうに、何度も紅茶を口に運んでいる。
「お前……この淹れ方は、どこで習った」
「え? どこって……特に習ってないですけど。なんとなく、このお茶はこうやって淹れた方が一番美味しいな、って体が覚えてるというか……変ですよね」
私が苦笑いしながら頭を掻くと、先生はふっと目を細めた。
その表情が、あまりにも優しくて、私の心臓がドクンと跳ねる。
学校では絶対に見たことがない、蜂蜜のように甘くて穏やかな微笑み。
「変じゃねぇよ。……お前は、昔から茶を淹れるのだけは上手かった」
「え? 先生、私と昔会ったことあるんですか?」
「……さあな。お前が忘れてるだけだろ、大馬鹿野郎が」
口調はいつも通り乱暴なのに、私の頭をぽんぽんと撫でる掌は、驚くほど温かくて優しかった。
なぜだろう、初めて触れられたはずなのに、懐かしくて涙が出そうになる。