第2章 2
港の風が少しだけ冷たくなってきていた。
ことみは紙袋を抱え直しながら、サンジの横を歩く。
「今日って、ほんとにいろいろありましたね……」
「まだ終わってねぇけどな」
「そうなんですけど!」
言い返しながら、ことみは笑う。
その無邪気な横顔を見て、サンジはほんの一瞬だけ目を細めた。
気づけば口の端が、勝手に緩む。
(……ほんと、よく笑うやつだな)
「……かわいいな」
ほとんど息に紛れるみたいな小さな声が、思わず漏れた。
「え?」
ことみが振り向く。
「なんか言いました?」
その声で、サンジは一瞬だけ固まる。
(……今の、俺か?)
自分で言ったはずの言葉に、妙に遅れて意識が追いつく。
ほんの一瞬だけ目を見開いて、それから軽く咳払いをした。
「何も言ってねェよ」
わざと何事もなかったように視線を前に戻す。
「ほら、早く戻るぞ」