第2章 2
しばらく並んで歩いたあと、
ことみは抱えていた紙袋をぎゅっと持ち直した。
港の灯りが海に反射して、きらきら揺れている。
「……今日」
ぽつりと声が漏れる。
「めちゃくちゃ楽しかったです!」
勢いのまま振り向くと、
サンジは少しだけ目を細めた。
「そりゃよかった」
「ご飯も美味しかったし、街もすごいし、服も買えたし……」
言いながら、自分でも笑ってしまう。
「なんか、全部夢みたいです」
少し間を置いて、ことみは続ける。
「サンジくんと回れたのも、すごく楽しかったです」
その言葉に、
サンジは一瞬だけ目を細めて煙を吐いた。
軽く笑って、前を向く。
「そりゃどうも」
それだけ言うと、少しだけ間を置いて続ける。
「まぁ、こういうのは別に今日だけじゃねぇだろ」
何気ない口調。
けれどその言葉のあと、ふと頭の片隅に影が落ちる。
(……こいつ、いつか“元の場所”に戻るんだよな)
この世界じゃないどこかへ。
最初から、ここにずっといるわけじゃない存在。
その事実だけが、妙に現実的に浮かぶ。
サンジはそれを深く考えないように、煙を吐き出した。
「島なんざまだまだあるしな」
そして何もなかったように歩き出す。
ことみはその背中を見て、少しだけ目を瞬かせたあと、
慌ててその後を追いかけた。