第2章 2
ことみは少しだけ迷ってから、そっと店の中へ足を踏み入れた。
扉を開けた瞬間、外の喧騒とは違う熱気が包み込んでくる。
鉄板の焼ける音。
皿のぶつかる音。
誰かの笑い声。
狭い店内には、港で働いているらしい男たちや旅人たちがぎゅうぎゅうに詰まっていた。
「いらっしゃい!」
威勢のいい声が飛ぶ。
その空気の強さに、ことみは思わず少し肩を縮めた。
するとサンジが自然に前へ出る。
「二人。空いてる席あるか?」
店員が店の奥をちらっと見てから、手を振った。
「奥なら空いてるぞ」
「サンキュ」
サンジは軽く片手を上げて、そのまま奥へ進んでいく。
ことみは慌てて後を追った。
店の中は騒がしいのに、サンジは妙に迷いなく歩く。
こういう場所に慣れているんだと、なんとなくわかった。
席に座ると、木の椅子がギシッと鳴った。
テーブルには小さな傷がたくさんついていて、長い間いろんな人がここで飯を食べてきたんだとわかる。
ことみが落ち着かないまま周りを見ていると、
「何食いたい?」
サンジがメニューも見ずに聞いた。
「えっ」
突然振られて固まる。
というか、知らない料理の名前ばかりで何が何だかわからない。
その様子を見て、サンジが少し笑った。
「まぁそうなるか」
メニューを軽く閉じる。
「だったら適当に頼むぞ」
「あ、はい……お願いします」
返事をすると、サンジは店員の方へ視線を向けた。
「おすすめ適当に持ってきてくれ。あと、腹減ってるやつ向けで」
「おう!」
威勢よく返事が飛ぶ。
そのやり取りをぼんやり見ながら、ことみは小さく息を吐いた。
さっきまで緊張していたはずなのに、
気づけば少しだけ肩の力が抜けていた。