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HQ短編集

第7章 赤葦に可愛く思われたくて色々するけど全部空回っちゃう話



「はい、熱いから気をつけてね」
「ありがとう」
「ご飯前には終わりそう?」
「そうだね、あと1時間ぐらい?かな」


ゆず茶の入ったマグカップを彼の傍へ。正面に座って自分のカップを両手で抱えるようにして、湯気の上がる表面を何となく見つめる。

今日は久々の休日だった。普段多忙な京治の貴重な休みぐらい自分のために使ってほしくて予定もなにも立てなかった。

それなのに映画でも行こうかと誘ってくれて、今話題のアクション映画を選んだのはそこそこグロいシーンが多いのを知っていたからで。

チャンスとばかりに大袈裟に抱きついてやれと企んで、上映開始わずか30分で私の作戦なんて頭の片隅にさえ残らないほど本気でびびり散らかしてしまった。

結果オーライと言えば聞こえはいいけど、あまりの顔色の悪さに体調まで心配されて、罪悪感で暫く彼の顔も見れなかったのは言うまでもない。

ルームウェアをもっこもこのショートパンツにしたら冷えは大敵とスウェットを渡され、上目遣いで味見をお願いしたら顔赤いけど熱ある?なんて、ことごとく空振る私のメンタルはもうそろそろご臨終になるんじゃなかろうか。


飲み干したマグをシンクに置いて漏れたため息は、連敗の象徴のように聞こえて何故か笑いそうになった。


「さん」
「うわっ!びっくりした、どしたの?」
「今日ずっと挙動がおかしいけど、もしかしてなにか悩んでる?」
「……挙動がおかしい、のか。私」


名前を呼ばれた同じタイミングで背中に京治の体温。ぴったりくっついて、お腹に回った彼の腕が少しだけ強くなる。私の肩口に顔を乗せるから黒髪が耳にかかってくすぐったい。

今日一日色んな角度からアプローチした私の可愛げ、は彼の目を通すとただの挙動がおかしい変な人に見えてたんだなと思うと、悔しいとか悲しいを通り越して、なんだかバカらしくなってきた。

可愛いは作れる。よく見聞きする文言も絶対、ではないことを痛感させられた気分だよ。



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