第7章 赤葦に可愛く思われたくて色々するけど全部空回っちゃう話
「けーじー、これ開かないー、あけてー」
「……さん」
「ん?」
「握力落ちた?と言うか全体的に体力落ちてるんじゃない?筋トレするなら付き合うよ」
「……筋トレ」
夕方の自宅。夕飯にと作ったシチューの横で、ポットの注ぎ口から湯気が立ち上る頃を見計らって声をかけた京治の大きな手にはゆず茶の瓶。
ぽんっといい音が鳴ったのを確認してから畳み掛けるように次を仕掛ける。
「んー、」
「なにしてるの」
「この1番上のシチュー皿取りたいんだけどギリ届かなーい」
「よく使う食器類なら配置変えようか。あ、それか折り畳み式のステップ買っておくよ」
「えーっと、…………はい」
わざとか?わざとなのか?
顔色ひとつ変えず私の仕掛けた罠を淡々とこなす京治は予想の斜め上な対応で思わず顔が引き攣りそうになった。
持ち帰りの仕事に戻ってしまった彼は何事もなかったかのようにダイニングテーブルでパソコンを弄ってるけど、正直ここまで惨敗するとは思ってなかった。
はなんでも自分でやりすぎ。
もっと可愛いとこ見せないと、飽きられちゃうよ?
男なんて頼って甘えてなんぼでしょ。
ことの発端は友人のこんな一言だった。
京治と知り合って数年。付き合って1年半。一緒に住み出してからは数ヶ月。
彼が私のどこに惹かれて一緒にいてくれるのかは今まで一度も聞いたことがないから知らないけど、少なくともそんな表面上の繕いだけで女の子を選ぶやつじゃない。そこは私が1番よく分かってる。
それでも同棲したらマンネリ化も早いって言うじゃん?なんて聞かされたら単純な私はきっちり焦ってしまった。自分の可愛げのなさを十二分に自覚しているから。