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HQ短編集

第6章 天下の及川さんでも本命の前ではこうなっちゃうよねって話



「逆に聞くけど、なんで及川がそんなこと言うの?」
「一応クラスメイトだし?ああいうタイプは同じ男としてどうかと思うし?もしお前が遊ばれて捨てられたら後味悪いし?」
「なんの後味よ及川に関係ないじゃん。それに遊ばれる前提なのも失礼だよね。そもそも友達だからそんな風にはならないよ」
「わっかんないでしょ!警戒心なさすぎて見てるだけでイライラする!」
「だからなんで及川がイライラするのって」
「それは、…………」
「………あー、はは。及川って私のこと嫌いだもんね。そりゃ嫌いなやつが自分の視界に入ったらイライラもするか。……なんかごめんね」
「ちがっ、」


及川の手をそっと振り払えば簡単に剥がれたのをいいことに、そのまま教室の扉へ向かって歩く。

絶対嫌われてる。そう思って過ごしてきたけど、絶対の中にもほんの少しの揺らぎはあった。自分の勘違いだったらいいのにって。

だけど面と向かってちゃんと本人からイライラするなんて言われたらもうどうしようもない。目頭が熱くなる感覚に、まだ出てくるなと唇を噛みしめて扉に手をかけた。はずだった。


「なに1人で勝手に勘違いしてんのさ」
「……っ」
「まだ話終わってないんだけど」
「……なに」
「こっち向きなよ」
「いやだ」


逃げられなかったのは誤算だった。開けようとした扉は閉まったままで、言い逃げなんてさせないとばかりに私の肩を掴んだ及川に無理やり振り向かされる。

今日初めて絡んだ視線。目の奥にははっきりとした動揺の色が滲んでいて思わず息が詰まった。傷ついたのは私のはずなのに、なんで及川が泣きそうな顔してるのよ。




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