第6章 天下の及川さんでも本命の前ではこうなっちゃうよねって話
「俺のほうが1年の時からずっとお前のこと見てたし、知らないぽっと出のやつと仲良いのがイライラするだけって、なんで分かんないの?」
「………は、い?」
「その反応腹立つんだけど」
「いやごめん、何言ってるかほんとに分かんない」
「あーもう、だから!!嫌いじゃない、寧ろ逆!!」
いやいやいや。
いやいやいやいや。
混乱する頭で及川の言葉を必死で噛み砕く。
逆ってなに。他のやつと仲良いからイライラするってなに。
そんなの、冷静じゃない私でも分かる。だけど今までの及川の対応はどうしたって逆じゃない。
もしかして言い間違えた?ほんとは嫌いじゃない、寧ろその逆の逆って言うブラックジョークなんじゃないかと思うぐらいには驚いているわけで。
それでもバツが悪そうに視線を逸らして、口元を手の甲で隠す及川を見てしまえば、本音なのかもしれないと期待する私がいるのも事実だった。
「お前は今日は俺が送るから、そいつにちゃんと断っといて」
「え?」
「ほら早く、今すぐ連絡して」
「あ、あぁ、はい」
言われるがままにメッセージを送って、及川を見上げる。視線に気づいた及川が、ぼさっとしてないでさっさと行くよ。私の手を掬って一歩前を歩き出した。
繋がれた手はちゃっかり恋人繋ぎ。耳は真っ赤。
ファンの女の子に見せる及川とはかけ離れすぎて理解が追いつかない私が、
数週間後のとある放課後。アイツめちゃくちゃ好きなヤツの前ではどう接していいか分かんないって、そういや言ってたな。
ふと溢した岩泉のそんな言葉でやっとちゃんと腹落ちができた。
余計なこと言わないで!って岩泉に怒った及川が相変わらず不機嫌な顔で、それでも必死に重い愛の告白をしてくれたのはまた別のお話。