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HQ短編集

第5章 恋愛の三種の神器を語っていたら目の前の男が全部持ってた話②



「この俳優さんいつ見てもイケメンなんだよね」
「……お前ホンマ」
「ん?って、うわっ!?なに!?こわいってば!」
「ほんまあかんわ、もう怒ったからな」
「なになに、こわいって!下ろして!」
「あかん。俺おんのにイケメン見んなやアホ」


なんの前触れもなくいきなり反転された体は気づいたら彼の肩にお腹が乗っている状態だった。まるで鉄骨を担ぐように持ち上げられて、連れて行かれたのは彼の寝室で。

ベッドに放り投げられた体がぼふっと間抜けな音をたてて跳ね返る。灯りのない部屋の中、暗闇に慣れていない目は、それでも間髪入れずに覆い被さった彼からじっと見下ろされているんだと分かった。


「妬かせたかったんか?」
「ちがうよ、そんなことしないし」
「まぁどっちでもええわ。帰れる体力残らんぐらい、気持ちようなろうや、ちゃん」
「んんっ」


口の端を吊り上げ、不敵に笑った治の瞳には色がつく。男の顔を惜しげもなく晒した彼に噛みつかれた唇は、最初から遠慮もなにもない。

無理やりこじ開けて入ってきた舌は余すことなく暴れ回り、吸って舐めて噛むを繰り返す彼の、時折漏れる呼吸の音が私の鼓膜に響いた。


「前から思っとってん」
「んっ、なにを」
「お前喰うたらどんな味すんやろなって」
「食べ物と一緒にしないでよ」
「想像通り、えらい甘い唇しとるわ」


額同士がくっ付く寸での距離。好物を目の前にした時の治の嬉しそうな顔が重なって、ああそうか、この男は性欲と食欲が直結してるのかと思った。

鎖骨のあたりに顔を埋めた瞬間僅かに走る痛みが何度も迫ってきて、まるで彼の所有物だと言わんばかりに無数の花が咲いていく。

普段の彼からは到底考えられない。何に対しても冷めた物の見方をしてるのに、剥き出しの独占欲に当てられた体はどんどん体温が上がっていくような気がして、どうしようもなく疼く下腹部に煽られる羞恥心。

それに気づかれたくなくて、頭を抱えるように抱きしめたのに、難なく抜け出した治がもう一度私の唇に自分のそれを押し付けた。


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