第4章 二口堅治に付け込まれてそのまま付き合っちゃう話
「なにしてんの」
「お前に任せてたら夜が明けるわ」
「そんなことないし」
「そんなことないやつはこんな時間までぼけっとしてねんだよ」
くるくるとの指の上で遊んでいるペンを奪って反転させた日誌を埋めていくと、私そんな字汚くないよ?って真顔で言われたけど無視。
こんなもん適当でいいとばかりにミミズ文字を半分ほど滑らせた頃、黙り込んで何も言わなくなった彼女の視線はまた窓の外に釘づけになった。
物悲しげなその横顔を見ると、無性に苛立って仕方ない。瞼の下がうっすら腫れているのも、目尻に溜まっている通常より多い水分も、彼女にこんな顔をさせたヤツにも全部腹が立つ。
「付き合ったらしいな、アイツら」
「ねー、びっくりだよ」
「くっ付くのも時間の問題だっただろ」
「そう、なのかな。私が一番仲良いと思ってたんだけどな、はは」
怒りの矛先を決してに向けちゃいけない。そんなもん百も承知だ。学年で1番のモテ男を見るコイツの目は誰が見たって惚れてる女のそれだった。その色が付いた視線は絶対俺に向けられることはないって分かってた。
だからこそ意地の悪い言葉を並べ立て、もうお前に勝ち目なんてないんだと、さっさと諦めろと現実を突きつけてしまう。
弱々しく笑った声とはちぐはぐな表情に、堪えきれなくなった目元の水がとうとう溢れて彼女の頬をひっきりなしに濡らしていく。