第4章 二口堅治に付け込まれてそのまま付き合っちゃう話
「あーやだやだ、しんみりしすぎちゃ、……」
「拭いても拭いても出てくんじゃん」
「………っ」
泣かせてしまった罪悪感か、それとも拗れに拗れた思いのせいか、気づいたら手を伸ばしてた。彼女の頬を自分の親指で何度も撫で上げ、泣きすぎだろって笑ってやれば、そんなことをされるとは夢にも思ってなかったは固まったまま、文字通りされるがままだ。
どれぐらいそうしていたか分からないけど、はっと我に返った彼女はそれでも俺の手を払うことはしなかった。
ほんのり赤くなる耳に泳ぐ視線。恥じらう姿に仕留めるなら今しかないと思った。
「お前さ、俺のこと利用してみねぇ?」
「は、い?」
「寂しい時は一緒にいてやるし、人肌ほしいときは手ぐらい握ってやるし」
「……それは、つけ込むってこと?」
「なんだよちゃんと頭回ってんじゃねえかよムカつくわ」
「ちょ、痛いって引っ張らないでよ」
失恋直後の女は格好の的だ。それが好きなヤツなら尚更で、付け入る隙をみすみすスルーできるほど俺は優しくねえんだよ。の涙を吸った指で柔く頬を抓ってみれば潤んだ瞳のまま抗議の視線を寄越すけど、そんなもん怖くもなんともない。
「でも、二口なら別にいいかなって思っちゃったから、たぶんまだちゃんとは頭回ってないよ」
「後でやっぱ無理とか言うなよ」
「それはあんたの頑張りしだいだと思います」
上等だコラ。
コイツは少女マンガの王道ヒロインではなくて、俺は主人公とくっ付くモテ男でも王子様でもないけど。
少なくとも死にそうな面してたさっきより、軽口叩いて挑発的に笑う今のほうがよっぽどらしい。
傷口を抉るふりしてその涙をさらってやった俺は、
コイツ限定のダークヒーローぐらいにはなれるだろうか。