【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第1章 1
「…もう一回。」
一拍。
「——命令すんじゃねぇ。」
そう言い返す声は掠れていた。
少し背けた顔がゆっくりと正面に引き戻される。抗えるわけがなかった。
今度は迷わなかった。深く、貪るように透の唇を塞ぐ。
後頭部を支える手がぐっと力を込めて、逃がさないとでも言うように。舌が口内に滑り込み、熱と酒の味が溶け合った。
呼吸の隙間すら惜しむような、切羽詰まったキスだった。
透は長いキスに酸欠になりクラクラする。
自分でも目の力が抜けて、蕩けているのがわかる。
ようやく唇が離れ、銀色の糸が一瞬だけ繋がって切れた。荒い息。蕩けた透の顔を見下ろして、爆豪は奥歯を噛み締める。
「……そのツラ反則だろ。」
呟きは吐息に紛れて消えかけた。震えるような声だった。
透をソファに押し倒す——つもりだったが、寸前で動きが止まる。
「やりたい」と「ちゃんとしたい」が綱引きをしている。結果、中途半端に覆いかぶさるような体勢で固まった。
赤い顔のまま、ぼそりと。
「ベッド。」
「ん、いいよ。」
返事の途中で透の膝裏に腕を回し、軽々と抱え上げた。
鍛え上げられた体幹は伊達ではない。
女性1人の身体など、爆豪にとっては大した重さではなかった——が、問題はそこではない。
横抱きにした透と目線の高さが近くなり、酔って上気した顔がすぐ目の前にある。心臓がうるさい。
寝室までの数歩がやたら長く感じた。視界の端で透が自分の首にしがみついているのを見て、爆豪の耳が赤く染まる。
「暴れんなよ。落とすぞ。」
照れ隠しの一言だった。