【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第1章 1
ラベルを見た瞬間、目つきが変わる。
「田酒ゥ?てめぇいいもん持ってんじゃねぇか。」
さっきまでの退屈そうな顔が嘘のように、声にわずかな高揚が滲んでいた。
「おい。それ俺にも注げ。」
隣に戻ってきた透の腰に再び手を添え、離さないまま。
むしろ指先に少し力がこもっている。見上げる目つきは完全に催促のそれだった。
「はいはい、爆豪様、かしこまりました。」
透はおちょこ2つを、ソファ前のテーブルに置く。
「注ぎますね〜」
“爆豪様”のくだりに、こめかみがぴくりと動く。
「……ふざけとんのか。」
だが声に怒気はない。むしろ口の端が微かに上がっていた。
おちょこを受け取り、注がれる田酒をじっと見つめる。透明な液体が照明を反射して揺れた。
くい、と一口。舌の上で転がすように味わってから飲み下す。
「——ッは。うめぇな。」
素直な感想がこぼれた。もう一杯、と目線で無言の要求を飛ばしながら、おちょこを差し出す。その手つきだけは妙に丁寧だった。
透は慣れた手つきで爆豪におかわりを注いだ後、自分も一口味わった。
「やっぱりこれが1番好きだなぁ〜」
2杯目をゆっくり傾けながら、隣で幸せそうに目を細めている透を横目に見る。何か言いたげに口を開きかけて、結局田酒で流し込んだ。
「悪ィ酒じゃねぇのは認めてやる。」
それが爆豪なりの最大級の賛辞であることは、もはや説明するまでもない。
おちょこは2人の手と口元の間を何度か往復し、瓶の中身が少しずつ減っていく。田酒の芳醇な香りが部屋に満ち、夜は静かに深まっていた。