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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


全身にのしかかる、凄まじい呪力。
肌がひりつき、息を吸うことさえ苦しい。


頭では反撃しなきゃと思っているのに、身体が言うことを聞かない。

こんなの、どうやって戦えばいいの?


圧倒的な力の差を前に、私はただ震えることしかできなかった。


長い爪が私の髪に触れた。
絡まった髪を指先で梳き、何度も頭を撫でてくる。

覚えてる。
幼い頃、いつもこうして撫でられていた。


姑獲鳥は私を巣の真ん中へ戻すと、ずり落ちた毛布を肩まで引き上げた。

それから、私の頬に顔を寄せる。



『……もう……はナさない……』



全身がぞくりと粟立った。

顔を背けようとしたけれど、長く尖った爪がまだ私の髪に触れている。


もし、この爪が首に向けられたら……。
そう考えただけで、喉がひゅっと縮まった。


私は目をぎゅっと閉じ、震える身体を必死に縮こまらせていると、姑獲鳥が突然ピクリと顔を上げた。


外の気配を窺うように首を不自然に傾ける。
そして、私の身体から腕を離し、音もなく布の山の奥へと姿を消した。


姑獲鳥の姿が見えなくなると、やっと息ができるようになった。

あの頃は、こんなにも恐ろしいものだなんて知らなかった。
あの冷たい腕の中が、世界のすべてだったから。


でも、今は違う。
私の居場所はここじゃない。

私には、帰りたい場所がある。


恵くん。

津美紀ちゃん。

五条先生に、みんな。


帰りたいよ。
会いたい。


だけど、どうやって?
ここから逃げる方法なんて、わからない。


ポケットからスマホを取り出し、恵くんに連絡しようとしたが、画面には『圏外』の文字。

何度試しても、電波は入らなかった。


見渡す限り、積み重なった服やタオルばかり。
どこに出口があるのかも、見当がつかなかった。


このまま、ずっとここに閉じ込められるの……?
もう二度と、恵くんに会えないの?


そんなの……そんなの、嫌だよ……!
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