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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


***



あたたかい。

誰かの腕に抱かれて、ゆっくりと身体が揺れている。

柔らかな布にくるまれていて、身じろぎすると、ふわふわした感触が頬をくすぐった。

頬に触れる、柔らかな指先。
耳元で聞こえる、穏やかな声。


顔を見ようとするけれど、ぼんやりと霞んでいて、よく分からない。
胸に頬を寄せると、とくん、とくんと鼓動が聞こえてくる。


手を伸ばすと、誰かが私の指を握ってくれた。








「、私の可愛い子」

















「…………っ!」



目を開けると、そこは薄暗い空間だった。


夢と同じで、頬に柔らかいものが触れている。
身体を起こそうとして、手の下にあるものに気づいた。


……服?
シャツやタオル、古びた毛布。


それらが幾重にも積み重なって、私の身体を包んでいた。
辺りを見回すと、どこまでも大量の衣類が積み上げられている。


そうだ、私、姑獲鳥に連れ去られたんだ。
じゃあ、ここは……。

五歳まで暮らしていた、あの巣と同じ。
あの頃は、何なのか分からなかったけど。

私が毎晩くるまって眠っていたものは、服やタオルだったんだ。


古びた布の、埃っぽい匂い。
その奥に混ざる、湿った羽の臭いに気づいた途端、背筋が冷たくなった。


振り向くと、積み重なった布の向こうに、黒い羽が見えた。
長い髪が垂れ下がり、その奥から青白い顔が覗いている。


ずっと恐れていた存在。


両親を殺し、私を攫い、私が声を出して誰かを呼べば、いちばん大切なものを食べると告げた呪霊。


相手は特級呪霊だ。
小さい頃は殺されることはなかったが、今はわからない。


ここから逃げなきゃ。


手に呪力を溜めた瞬間、冷たい腕が私を抱き寄せた。



「……っ!」



身をよじって逃れようとするが、びくともしない。

手のひらに集めていた呪力を放とうとするが、できなかった。
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