第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
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あたたかい。
誰かの腕に抱かれて、ゆっくりと身体が揺れている。
柔らかな布にくるまれていて、身じろぎすると、ふわふわした感触が頬をくすぐった。
頬に触れる、柔らかな指先。
耳元で聞こえる、穏やかな声。
顔を見ようとするけれど、ぼんやりと霞んでいて、よく分からない。
胸に頬を寄せると、とくん、とくんと鼓動が聞こえてくる。
手を伸ばすと、誰かが私の指を握ってくれた。
「、私の可愛い子」
「…………っ!」
目を開けると、そこは薄暗い空間だった。
夢と同じで、頬に柔らかいものが触れている。
身体を起こそうとして、手の下にあるものに気づいた。
……服?
シャツやタオル、古びた毛布。
それらが幾重にも積み重なって、私の身体を包んでいた。
辺りを見回すと、どこまでも大量の衣類が積み上げられている。
そうだ、私、姑獲鳥に連れ去られたんだ。
じゃあ、ここは……。
五歳まで暮らしていた、あの巣と同じ。
あの頃は、何なのか分からなかったけど。
私が毎晩くるまって眠っていたものは、服やタオルだったんだ。
古びた布の、埃っぽい匂い。
その奥に混ざる、湿った羽の臭いに気づいた途端、背筋が冷たくなった。
振り向くと、積み重なった布の向こうに、黒い羽が見えた。
長い髪が垂れ下がり、その奥から青白い顔が覗いている。
ずっと恐れていた存在。
両親を殺し、私を攫い、私が声を出して誰かを呼べば、いちばん大切なものを食べると告げた呪霊。
相手は特級呪霊だ。
小さい頃は殺されることはなかったが、今はわからない。
ここから逃げなきゃ。
手に呪力を溜めた瞬間、冷たい腕が私を抱き寄せた。
「……っ!」
身をよじって逃れようとするが、びくともしない。
手のひらに集めていた呪力を放とうとするが、できなかった。