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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


「周りの建物や物に呪力を馴染ませて、『外から隠すこと』に徹底してるからね。ここまで同化されると、見ただけで境界を見つけるのは難しいかな」



外からの隠蔽に特化した結界。
だが、呪術において一方的な得はないはずだ。



「……でも、それだけの結界なら、何か差し引きがあるはずですよね」

「その通り。現実の物質を取り込んでまで隠蔽力を上げてるなら、その代償として、どこかに必ず『綻び』ができるはずなんだよね」

「綻び……」

「取り込んだ物質が現実側と接している部分に、完全には閉じきれない継ぎ目が生まれる。……まあ、この広さの中からそのわずかな綻びを見つけ出すのも、骨が折れるんだけどね」



五条先生がぐるりと工場の内部を見渡す。



「もう一度、手分けして探そう。少しでも不自然な場所があれば教えて」

「……はい」



俺も再び、辺りを見回す。


崩れかけた壁。
天井から垂れ下がった配管。
埃を被った、古い機械。


どこにでもある、ただの廃工場だ。


ノートに残されていた、たった一文字。
あれが『巣』を意味していたとしても、姑獲鳥がここを選んだとは限らない。


もし、見当違いだったら。

今こうしている間にも、は――。


何か伝えたいことがあるたび、俺の袖を引いて、一生懸命に手を動かしていた姿。
俺がそれを読み取ると、いつも嬉しそうに顔をほころばせていた。

そんな当たり前の光景が、もう二度と見られなくなるかもしれない。


最後に見たあいつの潤んだ瞳が、頭から離れなかった。


。
お前、どこにいるんだよ。
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