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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


『す』



……また、『す』?


いつものあいつの字とは思えないほど、線が乱れている。
おそらく、姑獲鳥と遭遇した時に書いたものだろう。

何かを伝えようとして、途中で書けなくなったのか?




す。




好……いや、違うか。
今はそんなこと考えてる場合じゃねぇ。



じゃあ、何だ?



すぐ?
『すぐ来て』ってことか?

いや、どこにいるかも分からないのに、それだけ伝えてどうする。

それとも、何かの名前か?
場所か……。


くそっ。
たった一文字じゃ、分かんねぇ。


考えろ。
が、あの状況で伝えたかったことは何だ?



「姑獲鳥の結界って、ちょっと特殊なんだよね」

「……特殊、ですか?」

「うん。周囲の建物や物を取り込んで、その内側に自分だけの空間を作るんだ。呪力も建物自体に薄く馴染ませてるから、外からは元の景色とほとんど変わらない。場所の見当もつかない状態じゃ、僕でも見つけるのは骨が折れるよ」



伊地知さんと五条先生の会話が耳に入る。


……周囲にあるものを取り込んで、自分だけの空間?


そういえば、が五条先生に保護されて間もない頃。
あいつはよく、家中から服やタオルを集めていた。

津美紀が畳んだばかりの洗濯物や俺の脱いだ服まで持ち出して、部屋の隅に積み上げる。

そして、その真ん中に丸まって寝るんだ。


何度片付けても、次の日にはまた同じことをする。

最初は何やってんだこいつって思ってたけど、狭い場所で身を隠そうとしてるだけだと思っていた。


……待てよ。
あいつは、隠れようとしてたんじゃなくて。

姑獲鳥と暮らしていた頃の寝床を、再現してたんじゃないのか?






「……す? そうか、巣だ」

「恵?」



俺はノートを五条先生たちに見せた。



「が昔、よく家中の服やタオルを部屋の隅に積み上げて、その中で丸まって寝てたの覚えてますか」

「うん、それがどうしたの?」

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