第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
「恵だよ。がずっと守ってたのは、恵だってこと」
「……俺?」
「そう。あの子にとって、一番大切な人が誰なのか。そんなの、昔から見てれば分かるでしょ」
五条先生は、今度は伊地知さんに顔を向けた。
「伊地知も気づいてたでしょ? 二人がずっと両想いだったって」
「えっ!?…………まあ、はい。お二人とも、お互いに好意を持っていらっしゃるのは、何となく……微笑ましいな、と」
「本人たちだけだよ、こんなに鈍いの」
「…………」
マジか。
……伊地知さんまで気づいてたのかよ。
五条先生は、呆然とする俺を見て笑った。
「恵を守るためなら、自分が声を出せないままでも構わない。あの子は、そう思ってたんじゃないかな」
「…………っ」
……俺を?
十年間、ずっと?
俺はを守るって決めた。
津美紀が呪われた時、俺は何もできなかった。
だから、今度こそ大切な奴を守るって。
なのに、守られてたのは俺の方だったのかよ。
「……だったら、なんで昨日……は、声を出したんですか。そんなに俺を失うのが怖かったなら、なんで……」
「それは本人に聞かないとね。さすがの僕もわかんないよ。だからさ、恵――」
五条先生が、俺の手元にあるノートを指差した。
「早く、を迎えに行こう」
「……はい」
俺が頷くと、五条先生は伊地知さんに向き直った。
「さて、と。姑獲鳥がの実の母親なら、生前ゆかりのあった場所に連れ戻した可能性もあるよね。伊地知、母親の過去については何かわかった?」
「はい。それなら――」
伊地知さんが資料をめくり、五条先生に説明を始めた。
二人の会話を耳にしながら、俺は手元のノートに視線を落とす。
つい昨日、に買ってやったばかりのものだ。
何か手がかりが残されていないかとページをめくっていると、思いもよらない言葉が目に飛び込んできた。