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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


「そう考えると色々腑に落ちるんだよね。姑獲鳥が、あそこまでに執着する理由も。が五年間も姑獲鳥の呪いにさらされても、生き続けることができたことも」

「……それなら、姑獲鳥が恨むのは父親のほうでしょう。どうして、にまで……」



あいつは、ずっと声を出せなかった。

自分の名前すら呼べず、何か伝えたい時は、いつも筆談や手話をするしかなかった。

それが呪霊だったとしても、実の母親の仕業だったなんて。



「……自分の子供ですよね。だったら、なんであいつをあんなに苦しめたんですか」



五条先生は、しばらく黙っていた。



「母親だからこそ、かもしれないね」

「……は?」

「さっき、あの目撃者の子が言ってたでしょ。『この子を傷つけるものは許さない』って」

「…………」

「姑獲鳥は、を傷つけるものを排除しようとした。そこに、縛りの鍵がある気がするんだよね」



傷つけるもの。


俺はもう一度、机の上の写真を見た。

赤ん坊を抱く女は、穏やかな顔で笑っている。
この女が、から声を奪った。

いったい、何のために――。



「それにさ、もう一つ気になることがあるんだよね」

「……何ですか?」

「が保護されてからの十年間、ずっと守り続けてきた縛りを破ったこと。あの子の性格なら、自分が傷つくだけなら、とっくに声を出してると思うんだよね。誰かを助けるためなら、自分のことなんて後回しにしちゃう子でしょ?」

「……どういうことですか?」

「が本当に恐れていたのは、自分が傷つくことじゃないってこと」

「……?」

「声を出したら、他の誰かを殺すとでも言われてたんじゃない? 自分じゃなくて、大切な誰かを失うのが怖かった。それなら、が声を封じていた理由もわかる」

「…………っ」



大切な誰か。
あいつが、そこまでして失いたくなかった奴って……。



「もー、恵。鈍いなぁ」



五条先生は呆れたように肩をすくめると、俺の鼻先に人差し指を突きつけた。
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