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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


「二人見てると、なんかイライラすんのよ。お互い好き同士なのに、全っ然付き合わないし。だから、ちょっと嫌がらせしただけ」



今、何て言ったの?
恵くんが、私のことを好き?



「だから、さん大好きな伏黒くんなんて、こっちから願い下げ。今はあっちの大学生狙ってるんだから」



沙耶香ちゃんが、さっきの男の人を顎で示す。



「せっかくいい感じなんだから、邪魔しないでくれる?」



それだけ言うと、沙耶香ちゃんは私の返事も待たずに背を向けた。
遠ざかっていく背中を、私はただ見つめていた。


嘘だった。
沙耶香ちゃんと恵くんは、付き合ってなんかいなかった。


じゃあ……恵くんが言っていた『好き』は――。



『お前を置いて、どこにも行くわけない』



昨夜の言葉が、頭の中に蘇る。

何度も重ねたキス。
私を抱きしめてくれた腕。
あの時、私を見つめていた恵くんの目。


もしかして。


本当に、私たちは――。


身体中から、どうしようもない嬉しさが込み上げてきた。
だけど同時に、全身から血の気が引いていく。


私、なんてことをしてしまったの。

沙耶香ちゃんに恵くんを取られると思って。
もう、どこにも行ってほしくなくて。


私は声を出した。
十年間、ずっと守ってきた縛りを破って。

よりによって、一番大切な人の名前を呼んでしまった。
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