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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


『どういうこと?』
『この人、誰?』
『恵くんは?』



私のノートを覗き込んだ沙耶香ちゃんは、黙っていた。
すると、男の人が不思議そうに私たちを眺めて、首を傾げた。



「え、この子誰? 沙耶香ちゃんの知り合い?」

「……中学の同級生よ」



男の人は、今度は私の顔をまじまじと見る。



「え、かわいー。名前なんていうの? どこの高校?」



いきなり距離を詰められ、思わず一歩後ずさった。
今はそれどころじゃないのに。



「……ちょっとっ」



答える間もなく、沙耶香ちゃんが私の腕を掴んだ。



「こっち来て」



乱暴に腕を引かれ、男の人から引き離される。
少し離れた場所まで連れていかれて、ようやく腕を放された。



「こんなところで何なのよ。邪魔しないでよね」

「…………」



邪魔しないで?
どういう意味?


私はまたノートにペンを走らせた。



『恵くんと付き合ってるんじゃないの?』
『なのに、どうしてあの人とキスしてたの?』



沙耶香ちゃんは書かれた文字を見て、一瞬黙り込んだ。
それから、ぼそりと呟いた。



「……私、伏黒くんと付き合ってないわよ」



…………え?
だって、昨日。
確かに沙耶香ちゃんは――。



『恵くんと付き合うことになったって言ったよね?』



沙耶香ちゃんは「ああ」と、思い出したような顔をした。



「あれ、嘘よ」

「……っ」



頭が追いつかない。
嘘?



「だって、ムカつくんだもん」

「……?」

「伏黒くん、口を開けば、って。中学の時からずっとそう。昨日だって、スマホの修理のついでにこっちから誘ったのよ? なのに、にもう近づくなって釘刺してきたんだから」



沙耶香ちゃんは腕を組んで、ふいっと視線を逸らした。
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