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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


『その声で誰かを呼んだら、お前のいちばん大切なものを食べてあげる』



幼い頃、何度も聞かされたあの言葉。


どうしよう。
恵くんに、何かあったら。

私のせいで、恵くんが――。



「…………っ」



膝から力が抜け、その場に座り込んでしまった。
手から、恵くんが買ってくれたカンパニュラのノートが滑り落ちる。


怖い。
さっきまであんなに嬉しかったのに。
今は恵くんのことが心配でたまらない。

早く戻らなきゃ。
恵くんに会って、無事を確かめなきゃ。
五条先生にも相談して、それから……。


そう思うのに、足が震えて立ち上がれない。



「えっ、ちょっと。大丈夫?」



顔を上げると、さっき沙耶香ちゃんと一緒にいた男の人が、心配そうに覗き込んでいた。



「どうしたの? 具合悪い?」

「もう放っておこうよ。行こ?」



沙耶香ちゃんが男の人の腕を引っ張った、その時だった。


ふっと、周囲の音が消えた。
車が行き交う音も、商店街を歩く人たちの話し声も、全部。

水の中に潜ったみたいに、気味が悪いほどの静寂。
急激に空気が冷たくなり、風が止まった。




「――きゃあああっ!!!」




突然、沙耶香ちゃんが鼓膜を劈くような悲鳴を上げた。
目を大きく見開き、私の背後を指差してガタガタと震えている。



「な、何よ……あれ……っ!」



その瞬間、鼻を突いたのは、覚えのある湿った羽の匂いだった。


嘘。
どうして。


沙耶香ちゃんが指差す方へ、恐る恐る振り向いた。




忘れるはずがない。




五歳まで、ずっと一緒にいた。



あの――。










『……みィ……つケたァ……』







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