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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


しばらく歩いていると、通りの端に小さな古本屋を見つけた。
店先には、古びた木箱に文庫本や雑誌がぎっしり並んでいる。

足を止めて、ガラス越しに店の中を覗いた。


こういうお店、恵くん好きそう。
静かだし。
人もそんなに多くなさそうだし。

今度、一緒に来れたら――。


ううん、何考えてるの。
こういうところこそ、彼女と来るんじゃないの。


胸がちくりと痛む。
でも、気分が晴れない理由はそれだけじゃない。


もう一つ、ずっと気になっていることがあった。


私、声を出したんだ。
縛りを破って、恵くんの名前を呼んだ。

ずっと、恵くんを失うのが怖くて、声を出さずにいたのに。

あの時は、ただ恵くんを誰にも取られたくなくて。
自分の気持ちを抑えられなかった。


もし、恵くんに何かあったら。
私が、あんなことをしたせいで――。

だけど、今のところ何も起きていない。
恵くんにも、私にも、変わったことはなかった。

一体、この縛りって……。


そこまで考えた時、少し先のカフェの前で、女の人と男の人が仲良さそうに並んでいるのが見えた。


見間違えるはずがない。
栗色の長い髪。


沙耶香ちゃんだ。


男の人が何かを言うと、沙耶香ちゃんが楽しそうに笑いながら、男の人の腕に自分の腕を絡ませた。


友達……?


目の前の光景が信じられずにいると、男の人が沙耶香ちゃんの腰を引き寄せて――二人の唇が重なった。



「……っ!!」



なんで?

だって。

沙耶香ちゃんは昨日――。



『伏黒くんと付き合うことになったから』



そう言ったのに。


無意識に二人の方へ歩き出していた。
沙耶香ちゃんが私に気づいて、目を見開く。



「……さん?」



急いでノートを開いた。
手が震えて、いつもより文字が歪む。
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